《中山道ひとり旅・近況》
先日、秋分の日の休みを利用して、旧中山道、南木曽宿から妻籠宿、馬籠宿を歩いてきた。
昨年10月、急に思い立って日本橋から出発したone day中山道ひとり旅は、最後の木曽路にさしかかった。
前日泊した塩尻の朝はあいにくの曇り空で煙っている。一番電車に乗って出発点の南木曽駅に降りる。
やや肌寒く雨模様でもあるが、いつもの通り短パンに半そでTシャツ、小さなリュックを背負って出発。
雨になる前に一つ目の宿場へと小走りに歩く。
山道が多い上に道に迷いそうなので、いつものランニングは封印して進む。
相変わらず人に会わない。木曽路らしく鬱蒼とした木々の間に道が続く。
時々石畳の登りもあり、江戸時代にタイムスリップした気分にひたる。
この旅は、「江戸時代の人に会いにいく」という最大の目的がある。
歩きはじめて1時間、とうとう誰にも出会うことなく妻籠宿の入口に来た。
宿場にたどり着くこの瞬間がたまらない。
歩いて来たひとだけが味わう、わくわく感、安心感。
人がいる、店がある。ささやかではあるが賑やかさが旅人の疲れを癒してくれる。
この宿場まちは古い建物の保存がよく、電線もなく、素敵な街並みがうれしい。
まだ旅は先があるので、じっくり街を眺めることなく、通り過ぎる。
雨が降り始めてきた。カッパをきて傘をさす。だんだん雨脚が早くなる。早足で進む、登る。
いよいよ馬籠峠に入ってきたようだ。
晴れていればこの自然を、昔なつかし木曽路を、満喫できるのにと思いながら歩く、登る。
朝なのに暗い、熊も出そうな静けさだ。
向こうから誰か来る。何人も来る。ほっとして声をかける。外国人旅行者のようだ。
この雨のなかをよく歩くなあ、と自分のことを棚にあげ感心する。
降りしきる雨のなかを、林の中を歩くこと約2時間、出会ったひとの数ではこの旅を始めて一番だ。
しかもこの雨のなか。その8割は外国のひと。日本人にはほとんど出会わない。
そうか、外国にも有名な馬籠宿を控えているからとわかったのは、ついにその入口に差し掛かったときだ。
急な坂に古い家々が並ぶまさに宿場町、馬籠宿。雨の中でも多くの観光客が行き交う。
前に一度この街を訪れたことがあったが、歩いてたどり着いたこの日は全く別の印象で出迎えてくれた。
昔の旅人も雨のなかでこの街にたどり着き、ほっとした気持ちで草鞋をぬいだことだろう。
(小林和雄記)
雨の馬籠宿 馬籠峠に入る
馬籠に向かう 石畳が続く
雲に煙る南木曽駅